超人誕生
10日9:00amあってはならないこと
放鳥中、締め忘れていた窓から竜胆が家の外へ飛び出てしまった。
10日9:40am追跡1
名前を呼び探し続けていると、道路を挟んで向かいにあるスナックビルから竜胆が答えた。
姿は見えないがビル三階のベランダからのようだ。
朝なのでもちろん店は無人だし、外から入れそうにない。
どうするか考えていると竜胆が鳴きながら飛び出してきた!
しかしそのまま真っ直ぐあさっての方向に飛んでいく!!
10日9:50am追跡2
追いかけるが見失う。
ここからは時間との勝負だ。
一瞬でも躊躇すれば竜胆の危険が大きくなる。
そもそも外聞を気にする余裕などなかったが。
閑静とはいえないが休日の住宅街のど真ん中、
リンドウ、リーン、リンドウ、リーン
という女の声が響き渡る。
ガタガタと窓を開ける音が聞こえる。
ご近所ではないが、顔見知りの人が不審人物を見るように私を見る。
子供たちが飛びたしてきた。
小一時間ほど見失った地点を中心に呼びまわるが反応がない。
吐きそうだ。
10日1:30pmローラー作戦
市内中の動物病院に電話をし、
ペットショップ、コンビニにビラを配り、
警察へは届け出を済ませた。
あとは歩きまわって名前を呼び続けるしかない。
竜胆が消えた地点、風向き、建物の配置を再考。
よし。
この範囲を徹底的に捜索だ。
10日2:30pm消えかける希望
日頃の運動不足がたたって膝が痛い。
お天気も良く、竜胆には良い流れだが、
紫外線アレルギーの私の顔には赤い斑点が浮かび上がっている。
喉も限界がきつつある。
狙い目の社宅をもう一度廻った後、一旦帰宅することにしよう。
10日2:45pm超人誕生そして大団円
私の家から直線距離で100m強。
アパート三棟で形成されている社宅内は広い駐車場に小さな公園もあり、
散りかけの桜が長閑だがシンプルな光景に色を添えている。
自然を知らない竜胆は人工物に魅かれるだろうと判断し、まずアパートを選択。
一度目の探索ではあまり大きな声を出さなかったが、改めた。
リンドウ
「リンドウ」
居た!
さらにリンドウ、リンドウと呼びかけると
「ピーポ、ピーポ・・・リンドウ!」
しかし姿は見えない。
リンドウ、リンドウ
「ピーポー」
見つけた!竜胆はアパート一階のベランダ、吊り下げられている
ピンチハンガーの上をこちらに向かって移動している!!
お互い完全に目が合っているが、
保護するには一階とはいえベランダ底部は私の胸下程の高さにあり、
ピンチハンガーには到底手が届かないうえ、竜胆は弱々しく震えるだけで飛ぶ気配がない。
住人は留守のようだ。
と、そこに隣人がベランダに出てきて「どうしましたか」と声をかけてくれた。
よし。
隣人に理由を説明し、ベランダに上るので証人になって下さいと頼む。
快く引き受けてくださった。よい人で本当に助かりました。
あとは私の身体能力をMAX値に引き上げるだけ。
いや、冗談ではなく、私、ものすごくインドアなので。
柵を両手で掴み、太腿が胸にくっつく高さまで片足をあげる。
道頓堀のグリコが更に片足を上げた状態を想像して下さい。
つま先がベランダに掛かった瞬間、一気呵成、両手に力を込め体を引き上た。
シャクトリムシのように弓なりになった体を遠心力が柵から剥がそうとする。
足を踏ん張る。柵の上部を掴み直す。
いける、と思った直後、左足左手が滑った。
ガクンと視界がずれ、重力が私を捉える。
「リンドウ!」
竜胆の声が聴こえた途端、ありえない力が湧き出てきた。
まさにシャクトリムシが後肢(?)のみで体を支え伸ばすように、
右足つま先に集約した力が重力に抵抗、僅かですが体の落下を停止させたのです。
超人サユリの誕生です。
そしてその期を逃さず両手で柵にしがみ付き、
上体を手すりに持ち上げる事に成功しました。
「竜胆」
そっと手を差しのべると竜胆が私の指をしっかりと、しっかりと握ってきた。
「リンドウ!」
10日3:00pmエンドロール
近くの動物病院に駆け込み、急患で診てもらう。
出血痕のある外傷が頭に2ヶ所、胸に4ヶ所、足に1ヶ所。
嘴にも数ヶ所戦った形跡がありました。
傷の大きさと保護した場所からおそらくヒヨドリ相手ではないかと。
幸い骨折等の大怪我はありませんがぼろぼろです。
もう絶対こんな目に遭わせるものか。
あれから三日後、竜胆の体力が戻ってきたので掛かり付けの病院に連れて行きました。
足の傷が腫れているが、順調に回復しているとの事。やっと安心できました。
超人化は私に傷跡を残しました。
経験のない場所が筋肉痛に・・・。
超人サユリは永遠に封印です。
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2010.04.13 | コメント(14) | トラックバック(0) | 竜胆の不思議
