赤ずきん様
むかしむかしある王家に、それはそれは美しい1羽の小鳥がありました。
その薔薇色に輝くかんばせから、「赤ずきん様」と呼ばれておりました。
ある日のこと、お世話係りは赤ずきん様にこうお頼みしました。
「私は今から掃除を始めます。つきましては赤ずきん様、
もぐりっこに夢中の竜胆を連れ戻して下さいませんか」
お玉様が終わり、やんちゃ期に入った赤ずきん様は
お世話係りがガタゴトと引っ張ってきた掃除機に、
キラリと好奇のひとみを向けます。
「お世話係り、この筒は何?」
「パイプと申しましてここを空気が高速で流れていきます」
ボスッ
あれ、赤ずきん様!
「なかなか居心地がよキュってよ」
そ、そうですか。
動揺するお世話係りをしり目に、
車輪やホースにチェックを入れる赤ずきん様は
掃除機にむちゅうです。
そんな赤ずきん様をしきりと窺う青い羽根の鳥が1羽。
しつこい視線に気付いた赤ずきん様が声をかけました。
「あなたは誰?」
オオカミくんは胸をはってそう答えました。
お世話係りと赤ずきん様の会話を盗み聞きしていたオオカミくんは
ついでこう言いました。
「ぼくも一緒にリンちゃんを呼びに行くでしゅよ」
隙あらば赤ずきん様をいただく心づもりのオオカミくんです。
「まあ、だいぶ寄り道をしてしまったわ」
赤ずきん様ははたとお役目を思い出しました。
「オオカミくん、走るわよ」
「ええ!?」
予想外に逞しい走りをみせる赤ずきん様に、
オオカミくんは襲いかかるどころか付いて行くのに精一杯。
それでも道中のアピールは怠らないオオカミくんの努力は
涙ぐましいほど健気であり、全身全霊でありました。
当然、目的地へ着いた頃にはもうへとへとです。
「あ、リンちゃんでしゅ!」
「ピヨ鳴きが聞こえたの」シャッ
「赤ずきん様のお耳は順風耳もかくやでしゅ」
「ちらりと青い影が見えたの」シャッシャッ
「赤ずきん様のお目目は千里眼もかくやでしゅ」
「・・・・・・」シャッシャッシャッ
「・・・・・・」
「赤ずきん様はどうしてさっきからクチバシを研いでいるのでしゅか?」
「それはね」
シャッシャッシャッ
「お玉が終わってもしつこいおまえを、どつくためだよっ」
この日、オオカミくんの悲鳴が聞こえたとか、聞こえなかったとか。
どっとはらい。
(社)日本動物園水族館協会に動物園・水族館の被害状況と支援のお願いが記載されています
(財)日本動物愛護協会、(社)日本動物福祉協会、(社)日本愛玩動物協会、(社)日本獣医師会による動物ボランティア募集などの緊急災害時動物救援本部が立ち上がっています
2011.08.07 | コメント(8) | トラックバック(0) | すてきなピピンさん
