マチュピチュへの遠い道のり
空中都市マチュピチュ
巨人がはいた息の中でコンドルの嘴が造り上げた都市。
空想を刺激するロマンティックな響きの遺跡があります。
マチュピチュ画像-ナショナル ジオグラフィック-
GWはそうだ、マチュピチュへ行こう!
4月30日、駅でみつけたチラシを相方に見せ、
ねぇねぇ、ここへ行きたいのぉ、と脅しまがいの上目使いで
相方の海へ行きたいという意見をねじ伏せる。
5月2日、車中で聴くCDを厳選し、いざマチュピチュへ。
街を出て、山に入り、ダムを超え、渓谷沿いをひた走る。
助手席の私が呑気に新緑を楽しむ最中も
道幅はどんどん狭くなり、標高はますます高くなる。
いくつものトンネルを抜けた時、マチュピチュを示す看板を発見。
「あ、そこ左ね」
人はあまりに容易く、行ってはならない領域へ足を踏み入れる。
まあ、これも遺跡のひとつなのかしら。
前方に緑に埋もれた石積みが木々の陰から浮かび上がり、
初心な冒険心が刺激されテンション高く相方を見やるが、
チラリともこちらに視線を寄こさない。
どうしたの?
”こ、こわすぎる”
どうして?
”そっち見てみ”
もう、なによ。
チラ。
もう一度、チラ。
こ、怖すぎる!!
視界全部が崖。
車内で足が震えるほど深く切り込んだ崖。
このまま見えない手に引っ張られて落ちて行く、
そんな錯覚に囚われる強烈な引力を持った崖が、
助手席側の窓に写っていた。
あ、あかんて。これあかんて!
”やから海行こ言うたやん!”
海?海やったらほらそこから見えてるやん!
”ほんまや~海はやっぱりええなぁ、て言うてる場合ちゃうねん!”
標高700m、対向車ぎりぎり。
剣呑な落石と、鮮やかな五月の若葉に囲まれたタイトロープな
道から望む瀬戸内海とその島々はまるで箱庭のように可愛らしく、
軽い気持ちで安寧の地を後にした愚かさを思い知る。
”進むんか?”
ここまで来たら行くしかないやろ。
”では行きますか!”
奮立たせた気力と裏腹に慎重に車を進めていく。
なにせ360度コーナーの連続です。
手作り感ったぷりの目印「あと3km」から「あと2km」まで10分を費やす。
あ、「あと1km」だ!
マチュピチュが目前よ、と歓喜しながら相方を見るがその表情は暗く陰っていた。
大抵の車を手足のように操る相方に、いまさら何の不安があるというのだろうか。
それとも車の免許を取得してから20年、
日本国民の安全のためハンドルを握る事を許されなかった
車社会下級層の私にはわからない機微があるのだろうか。
”いや単なる渋滞”
”だけど、全然流れてない”
前方を見るとおそらくマチュピチュを目指していた他の車が
次々にUターンしている。彼らが提供してくれた情報によると
「あと1km」からマチュピチュまでみっちり詰まっていると。
”帰りますか?”
・・・・・・帰りますか。
帰り道、途中の小さなスペースに車を止めてしばし石と戯れた。
この地帯独特の藍晶石(らんしょうせき)のきらきらとした
青紫色の輝きに疲弊した心が幾らか慰められる。
もろくも崩れ去った砂上の楼閣。
GWに車でおでかけ♪など浅はかであったのかもしれぬ。
ああ、遥かなるマチュピチュ
それにしても大胆なネーミングだ。
「私はサチュピチュへ行ってくるわ」
「ぼくもサチュピチュへ行ってくるでしゅ」
「リンもサチュピチュへ行くでち」
「早く行くでち!」
「行っ」
サチュピチュ・・それは私の膝から爪先までの靴下ゾーンを意味する。
ソファに座った私の垂直になったそこに爪と嘴をたてての昇り降りは
彼女たちにとって素晴らしい魅力があるようだ。
・・・・・・。
たった今、靴下に見知らぬ穴があく理由に気付きました。
ブログランキング参加中ポチっと
2010.05.05 | コメント(10) | トラックバック(0) | ピピンと非日常
