小さな悪魔たち
少し前まで、左手中指に生傷が絶えませんでした。
いまだ残る傷跡はピンク色に再生しているものの、
くっきりと当時の惨状を示しています。
どの傷も、2箇所でワンセット。
それぞれ幅1ミリ、長さは3~10ミリ、
深さはお好み次第の、
試しに職場の人間に見せると「うわっどしたん」と
眉を顰められた代物を私の指に残してくれたのは、
もちろん我が家の女帝、ピピンさんです。
ピピンさんはお玉様気分になるとケージを巣箱扱いします。
この時、ついうっかりケージに手でも入れようものなら、
こちらが手を引く隙を与えぬものすごいジャンプ力で飛び掛かり、
その自慢の嘴で思い切りガブります。
驚いた私がケージの入口を落として、
頭部だけ外に出ているギロチン状態になろうと、
勢い余って体がへんな具合にねじれていようと、
床網を両の足でふんぬと掴んだまま、
まさにギリギリと私の指をカッティングしていく様は、
もはや小鳥ではありません。
ちょっとした悪魔です。
竜胆の抜けた風切羽を、
メキメキと音を立てて咬み砕くピピンさん。
ふつう、くるくると回して遊ぶものでは。
ガブるピピンさんにインコ本の知識など一切役に立たず、
ひたすらピピンさんの気が削がれるまで我慢した後は、
打ちのめされた気分で傷口の消毒を行います。
その時です。
ぴゅーい ぴゅい
どこからともなく、愛らしい声が聞こえてくるではありませんか。
ぴゅーい ぴゅい
「・・・・・・」
ぴゅい?
「・・・・・・」
ぴゅい?
「・・そんな可愛い声で、しかも潤んだ瞳の上目使いで、
さらに小首をかしげても許しませ、、、」
ぴゅーい
「くっ!この小悪魔ピピンさんめ~」
私がデレデレの声でピピンさんの名を呼ぶと、
ピピンさんは確かに満足げなお顔をします。
このように、レベルインフィニティの人体破損能力および
人心操作能力をもつピピンさんは本当に小鳥なのでしょうか。
本当は小さな悪魔で、
コザクラインコに擬態しているだけなのでは。
いやむしろ、コザクラインコという種自体が、
小さめのデーモン一族なのかもしれません。
悪魔だから鳥目ではありません。
真っ暗なクローゼットの中を吟味するピピンさん。
悪魔の所業。
悪い顔をしています。
でも小さな悪魔だから仕方ないわよねぇ、など、
明らかに根本的な解決を見失っていると、
竜胆がずずいとやってきました。
いや、リンちゃんはどちらかというと
鬼○郎系に属していると思いますよ。
竜胆がするすると腕を登ってきました。
やはりこの動きは妖・・
あくまで、悪魔だそうです。
2012.03.16 | コメント(8) | トラックバック(0) | すてきなピピンさん
