変化
やってしまった後はあらまあ、
鏡を見ながらそう呟くしかなかった。
イーと唇を横に広げると、
真っ白には程遠いが、
それなりに整っていると人に言われて、
内心自慢にさえ思っていた歯並びの中心部、
上顎の前歯二本があった場所に、
ぽっかりと黒い穴が見える。
上顎中切歯が二本とも真中から消失していのだ。
そりゃそうだ。
コンクリートの床に顔を叩きつけたのだから。
貧血で階段から足を滑らし、垂直にばったん。
下から4段目、私の身長を合わせれば2mを優に超える高さを
考えれば前歯破損で済んだのは僥倖かもしれないが、
それでみじめな気持が収まるわけがなく、私は口腔外科へ走った。
医師「これは派手にやってしまいましたね」
私「ひゃい」
医師「痛いでしょう、痛いですよね・・・え?痛くない!?
おかしいですね、では水をかけますね、プシュってしますよ~、
はい(プシュッ)、・・・どれくらい痛いですか?
・・・・・ええ?痛くない!?」
私「まっひゃく」
わずかばかりの幸運はあったようだ。
傷は神経まで至っておらず、
おかげで残った歯をそのままに、
欠損した部分を樹脂で再生するだけで済むらしい。
負け惜しみに聞こえるだろうが、
いずれ似たようなことが起こると予測していた。
なぜなら慢性的な貧血でよくふらつくことに加え、
私は、障害物をよけるのがとにもかくにも下手なのだ。
視神経の異常か脳がゆるいのか、
目の前に柱があっても避けぬ鈍さ。
左右を確認した気分で車に撥ねられる事数回、
奈良では鹿に、六甲では羊に撥ねられた。
黒歴史に終わりはあるのだろうか、
そう考えた時、医師が治療の終わりを告げた。
渡された手鏡を恐る恐る覗き込むと、
どこから見ても普通の歯がそこにあった。
うむ。
イミテーションのくせになかなかのものだ。
しかしせっかく細工可能なものを手に入れたのだ。
私は隣で私の反応を窺っている医師に、
にっこりと微笑んでみせた。
「形は変えられますか?」
ムルさんがひさしぶりにシャンペンカラーに変色しました。
写真ではわかりにくいのですが、本当にきれいな薄黄色です。
最近荒れ気味だったピピンさんですが、
秋が深まるにつれ人肌が恋しくなるもので、
私の懐によく潜り込んでいます。
セルジくんへの態度もツン期からデレ期へと移り変わったようです。
短いデレ期を存分に楽しんで下さい。
先月1歳を迎えた竜胆のお顔はとても美しいコバルト色になりました。
「リンもほぐしてほしいでち」
立派な大人なのですが、
どうもピピンさんを基準に見てしまうせいか、
まだまだ子供に思えてしまいます。
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2010.10.09 | コメント(18) | トラックバック(0) | ピピンと非日常
